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キャロットのオルフェーヴル産駒(2018年度募集)
オルフェーヴル募集時の写真(サンデーサラブレッドクラブより転載)
今年のキャロットクラブ募集馬のなかに、オルフェーヴル産駒は 4頭います。以下、募集番号順に並べます。
- キューの17 (牡)
- フォルテピアノの17 (牡)
- コケレールの17 (牝)
- ディメンティカタの17 (牝)
ディメンティカタの17 のみ、関西です。
血統・配合と馬体・歩様など総合的に判断すると、個人的にはコケレールがいちばん好みです。
血統に関しては言わずもがな。馬体面に関して特に目につくのが繋の弾力で、後肢の太さやトモの幅、肉付きは物足りないのに推進力のある歩様に見えます。
ただネット競馬の「一口馬主」のページのアクセス数ランキングを見ると、現時点でコケレールはキャロット内 3位になっており、最優先をつかわないと取れないほど人気する可能性があります。
しかし魅力的であると同時に、本馬には非常に大きな欠点があると思っています。それはさておき、本題の短評に移りたいと思います。
2015年世代の傾向を探る
以下に、オルフェーヴル産駒の短評をまとめます。2016年世代は新馬戦がはじまったばかりでまだ情報が揃っていないので、2015年(現3歳)世代のデータとともに血統と配合を見ます。
勝ち上がり率は中央の芝・ダートに限ったもの、獲得賞金は地方や海外も含めたもので、特に記載のない場合は 2018年08月26日現在の情報です。
キューの17 (牡)
キューの2017 は、母父フレンチデピュティ。おそらく 11番仔です(2008 と 2013 は空胎だったことが確認できていますが、2005 は不明)。
初仔のルシルクは繁殖牝馬になってから輸入されており、2番仔のブレイクランアウトはマル外として国内で走っているので、3番仔を身ごもった状態でルシルク、ブレイクランアウトと一緒に日本に導入されたのでしょうか。
キューの17 の兄姉で、国内で走っているのはルシルクを除いた 10頭。そのうち中央で勝ち上がっているのが 4頭です。
ブレイクランアウト(共同通信杯)が重賞ウイナーで代表産駒、続いて 1000万下勝ちのエネアド、500万下勝ちのキュリオスティー、ブレイクエース(地方出戻り)と続きます。ちなみにルシルクは海外で 22戦1勝です。
祖母 P J Floral は、アメリカでキュー以外に 10頭の産駒を産んでいますが、どの仔もパッとせず目立った成績はあげていないようです。
キューの17 は 母が 20歳時の産駒。
直近の兄姉を見ると、2016年産のメルキュールは除くとして、その前のウィナーズブレイク(父ステイゴールド)が未勝利で終わりそうな気配濃厚、その上のキャノンショット(父ダイワメジャー)が勝ち上がれず地方移籍。
さらに上のブレイクエース(父キングカメハメハ)も前述のとおり、地方出戻りでなんとか 500万下勝ちという状況で、繁殖牝馬としての能力が落ちてきているような印象を受けます。
配合については、オルフェーヴル×フレンチデピュティは、現3歳世代で中央登録があるのは 2頭のみ。
アルドーレがダート転向 3戦目で勝ち上がり、ナリタカピリナは芝でもダートでも好走なしという結果です。
オルフェ産駒は 2頭なので参考になりませんが、父ステイゴールド×フレンチデピュティでは 15頭の産駒から G1勝ち馬のレインボーラインが出ています。
また勝ち上がり率が 57.1% と非常に高く、すべての勝利馬が 2勝以上をあげています。ステゴ×フレンチデピュティは相性が良かったようです。
ただ上記のように母の繁殖能力低下、兄のステゴ産駒が走っていない現状を踏まえると、強調できる材料があまりないのが正直なところです。
パワー的なフレンチデピュティのほかに、重めのニジンスキー(Nijinsky)が入っているのも、日本の軽い芝向きかどうかと問われると疑問に思えます。
馬体と測尺は今年のオルフェーヴル産駒のなかで最も良く、特に馬体のフレームはオルフェにそっくり。歩様についても柔軟性含めて及第点。価格も安いので、ある程度人気はするかもしれません。
個人的には母高齢の場合は、非常に優れた点がある馬以外は見送りますが、本馬にはそれが見当たらないので出資候補にはしません。
フォルテピアノの17 (牡)
フォルテピアノの2017 は、キューの2017 と同じく母父フレンチデピュティ。本馬は 7番仔です。
兄姉はどの馬も 1勝はするものの大成はせず、母フォルテピアノは、優秀なクラフティワイフ牝系において、とりわけ優れている繁殖牝馬とは言えません。
バルトロメオ(父ディープインパクト)とハンマークラビア(父ゼンノロブロイ)は未勝利を勝ったのみで、その後は鳴かず飛ばず。アインザッツ(父ステイゴールド)は 500万下を勝ち上がるも、さらに上のクラスには行けず。
パルティトゥーラ(父マンハッタンカフェ)は 1000万下を勝っていますが、1600万下では現状通用せず、降級後は 1000万下で苦戦。
クリストフォリ(父ヘニーヒューズ)はデビューが遅れたものの、初戦から好走を続けて 3戦目で勝ち上がり。今後期待できるかもしれません。
とりわけ優秀な繁殖牝馬ではないと書きましたが、2歳のキアレッツァ(父ディープブリランテ)以外の 5頭はすべて勝ち上がっており、打率や回収率という点では良い母馬のようです。
ただ芝向きの種牡馬よりもパワー型の種牡馬をつけて、しっかりダートに寄せたほうが良いような印象はあります。
キューのところで述べたように、父のステイゴールドとフレンチデピュティの組み合わせは悪くない配合ですし、本馬の上のステゴ産駒が 1000万下で好走していたことから、母との相性も良さそうです。
馬体はバランスが良く、測尺は生月日を考慮すると標準的。咬筋がしっかりして顎っ張りが良いので、食事はきちんととれそうです。
歩様は、特に大腿筋膜張筋の伸びと肩の出が良いことから、柔軟性が高そうな印象を受けます。そういった意味では芝向きに出ていると思われるので、配合面との折り合いがどうかはわかりません。
気になるのは、後ろから見たときに、右飛節が接地した瞬間に外側にブレること。トモがパンとしてくれば改善されるかもしれませんし、個人的には問題とは思いませんが念のため。
父以上にノーザンテーストの血を濃くしているので、それが吉と出るか凶と出るか。良い馬だと思いますが、僕は下記のコケレールがひどく気に入ったので、フォルテピアノには出資しません。
コケレールの17 (牝)
コケレールの2017 は、母父ザミンダー(Zamindar)。本馬は 6番仔です。
母コケレールはアイルランド産の競走馬で、フランスで 5戦、アメリカで 1戦して 6戦4勝。おもな勝ち鞍はサンタラリ賞(G1・芝2000) で、クイーンエリザベス2世チャレンジカップステークス(G1・芝9ハロン) でも 3着しています。
G1 を含む 4勝中 3勝は重馬場であげており、良馬場の仏オークスでは 14着惨敗。パワーが必要なコースに強かったのかもしれません。
ザミンダーの父ゴーンウェスト(Gone West)はミスタープロスぺクター(Mr. Prospector)系で、アメリカのダート戦線で活躍していますし、産駒も同じ傾向が強いのでその影響があるのだろうと思います。
母としては、海外で産んだ仔が 3頭いて、JBIS によるとうち 2頭が不出走、残り 1頭が 3戦0勝ということで、海外産駒は全体で 1勝もあげていません。
一方、国内で産んだ 2頭のディープインパクト産駒はどちらも勝ち上がっています。
そのうちのラヴィエベールは 1000万下勝ちが最高成績ながら、デビューから 10戦でいちども掲示板を外さず 9連対。当然ながら、1600万下でも好走を続けています。
気になるのは故障リスクです。
ディープインパクト産駒 2頭はどちらも屈腱炎を発症しており、現在休養中。海外産駒のうち 2頭が不出走なのも、デビュー前に故障を発生した可能性を見てとれます。
また、いままで産駒がなかった年が 3年あり、繁殖牝馬としての能力に疑問符がつく部分もあります。
配合については、オルフェーヴル×ミスプロ系は好相性です。
勝ち上がり率 36.8%(7/19)というのは産駒全体の 25.7% を大きく上回っていますし、重賞ウイナーも輩出。
ミスプロの後継フォーティナイナー系からはご存知のとおり、エポカドーロ(皐月賞)とラッキーライラック(阪神JF)が出ています。
この点は、父ステイゴールドがミスプロとの相性がそれほど良いとは言えなかったのとは相違があり、やはりオルフェには父と似ている点とハッキリ違う点があるのかなと思うところ。
話がそれましたが、前述のパワー&スピードの米国血統のほか、血統上にはカーリアン(Caerleon)経由でニジンスキーを含んでおり、字面上は重く見える配合でもあります。
しかし、カーリアン系のジェネラスを母父に持つオルフェ産駒 3頭のうちの 1頭、ミスティックグロウが 2連勝で 500万下を勝っており、現時点では母父系も母母父もオルフェーヴルとは相性が良さそうな印象。
本馬の馬体は、測尺のわりに良く言えばとても軽くしなやかに(悪く言えば馬体が薄く)出ており、2月中旬生まれというのを考慮すると、ミオスタチン遺伝子型は中長距離向きの T:T型と推測されます。
ディープとオルフェは勝ち距離や産駒の傾向から、どちらも T:T型だと思われるので、父にディープを持つ兄が芝の中距離で活躍しているのは、本馬にとっても良い材料。
何より気に入ったのが、歩様のバネです。トモはお世辞にも幅や厚みがあるとは言えないにも関わらず、飛節は思いのほかしっかりしていますし、繋にほどよい柔軟性と弾性が見てとれます。
一見硬そうに見えますが、しっかり股関節は動いていて長い肢をうまく生かしており、歩幅は大きくとれています。
この柔軟性という部分では、兄ラヴィエベールや前出のミスティックグロウを圧倒しており(2頭とも硬めでした)、それが良く出ると嬉しいなと思っています。
右前肢がやや外向ぎみですが個人的には気にしないレベル。体高が 159センチと高いわりに管囲が 19.7センチとやや細いですが、T:T型でそこまで馬体重が重くならないと見ているのでそれも大丈夫。
問題は、母系の故障リスクです。先述のとおり、上のディープ産駒 2頭がともに屈腱炎を発症。海外産駒も 2頭が不出走ということで、故障の発生を類推させます。
個人的には、データ的に当たりはずれの大きいことが見てとれるオルフェーヴル産駒なので、気に入ったのなら多少の故障リスクには目をつぶって突っ込もうという気持ちです。
ただ募集総額が低いこともあってか、かなり人気になりそうな予感がするので、最優先候補のディアデラマドレ(父エピファネイア)とどう折り合いを付けるかというのが悩みどころ。
繰り返しになりますが、今年のキャロットのオルフェ産駒のなかではコケレールが最も好きな馬です。
ディメンティカタの17 (牝)
コケレールで燃え尽きたので、ディメンティカタの2017 についてはアッサリと(笑)。母父デインタイム(Danetime)、母の 4番仔です。
母ディメンティカタはアイルランド産で、24戦3勝。愛1000ギニー(G1) で 2着になっています。
繁殖牝馬としては初年度から日本で供用されているようですが、2010年産のあと 3年連続で空胎となっており、そのあとも 1年おいて 2015年産がおらず空胎の模様。
受胎率が悪いのか、受胎しても流れてしまうのか、いずれにしても母胎の環境が気になります。
競走馬の能力には母体内での影響が強く関係しているという調査もあるので、たまに空胎になるのはともかく、上記のような異常値が出ているのは好ましくないです。
現2歳馬である 2016年産以外の兄姉を見ると、サトノプレステージ(父ディープインパクト)は新馬勝ちしたものの、その後の善戦むなしく 500万下を勝ち上がれず引退。
フェアリーフォート(父ハーツクライ)は中央で勝ち上がれず地方に転籍。現在も走っているようですが、C級を抜けることができていないようです。
祖母の仔を見てもあまり良い繁殖成績とは言えず、血統的にはほぼ強調できるポイントがありません。
配合を見ると、ステイゴールド×ダンチヒ系は勝ち上がり率は 35.9%(23/64)とそこそこ良く、ステゴ産駒全体(34%)を上回ります。
1頭あたり獲得賞金はかなり高く、3397万円で全体(2068万円)を大きく上回り、フェノーメノ(天皇賞春連覇)のほかウインガニオン(トヨタ賞中京記念)などの重賞勝ち馬も出ています。
しかしそれが父オルフェーヴルとなると傾向が変わるようで、勝ち上がり率こそ 28.6%(4/14)と全体(25.7%)をやや上回るものの、1頭あたり獲得賞金は 471万円と全体(726万円)を下回ります。
まだ 1世代だけのデータでなんとも言い難いですが、打率・打点ともに現状は期待できる配合とは判断できません。
馬体と歩様については標準的で、特にこれといった強調ポイントもマイナス材料も感じませんでした。あえて言えば写真では肋に張りが感じられて良いのと、首が太く喉鳴りリスクがありそうな点がマイナスに思えます。
母のきょうだいにセン馬が 5頭いるのも気になるところで、その母系にオルフェを父に迎えている点に気性面での不安が残ります。募集総額が小さいとはいえ、あまり手を出す気にはなれないというのが本音です。
血統も含めた総合評価
すでに結論と根拠を述べているとおり、今年のキャロットクラブ募集のオルフェーヴル産駒のなかでは、自分はコケレールの17 を推します。
ただ仮に、友人に聞かれたときにオススメできる馬かと言えばそうではないです。
血統と測尺は良いものの、馬体を見るとトモがかなり薄く全体的に筋肉は多く見えませんし、わかっているだけでも上の 2頭が屈腱炎を発症しており故障リスクも高そうです。
自分が強く良いと感じたのは歩様における後肢の使い方だけで、ほぼその 1点だけで惚れ込んでいます。
一口馬主の先輩に聞いても、この馬について血統以外の強調点はないとのことでしたし、一般的にはあまり良い馬とは言えないのかもしれません。そもそも、オルフェ産駒は勝ち上がり率が非常に低いというのもあります。
というわけで、自分の好みが前面に出た選定ですが、惚れ込んだ馬なので、ディアデラマドレとどちらに最優先枠を使うかを悩みたいと思います。
この記事の作成日は 2018年08月28日、最終更新日は 2018年09月01日 です。