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ミュージカルロマンスの2017の血統評価
- 父
- ディープインパクト
- 母
- ミュージカルロマンス(10歳時)
- 母父
- Concorde's Tune
- 5代内クロス
- なし
- 性別
- 牡馬
- 生月日
- 5月13日
- 募集総額
- 1億円
- 入厩予定
- 手塚貴久(美浦)
- 測尺
- 体重 : 388kg
体高 : 151cm
胸囲 : 167cm
管囲 : 20.4cm
※ 測尺は 2018年8月23日 発表の情報です。
※ 写真などの掲載について、クラブに許可を得ています。
ミュージカルロマンスの17(フォアシュピール)の配合分析
ミュージカルロマンスの2017 は、父がディープインパクト、母が BCフィリー&メアスプリント(G1) など海外G1 を 2勝したミュージカルロマンス、母父がコンコルズテューン(Concorde's Tune)という血統です。
母ミュージカルロマンスの産駒成績
- キラーコンテンツ(14 牡 ディープインパクト)10戦3勝 現役
4歳上500万下 - セリユーズ(16 牝 ディープインパクト)1戦0勝 現役
母ミュージカルロマンスはアメリカ生まれの競走馬で、BCフィリー&メアスプリント(G1) やプリンセスルーニーハンデキャップ(G1) を勝ち、2011年にエクリプス賞チャンピオンスプリンター牝馬(最優秀短距離牝馬)に輝きました。
ミュージカルロマンスの父コンコルズテューンは、JBIS によればミュージカルロマンス以外の重賞勝ち馬を輩出していません。種付け頭数が少なかった可能性がありますが、母父の実績のなさは懸念点です。
祖母キャンドルライトディナー(Candlelightdinner)は、ミュージカルロマンス以外にはあまり良い産駒を産んでいません。
一応、リズンスターS(G2) やパットデイマイルS(G3) で 2着しているフォアヴァモ(Forevamo)、プエルトリコのレベルはわかりませんがそちらで 25勝しているブウェルベルーベンエム(Vuelve Ruben M.)などがいます。
ミュージカルロマンスは、吉田勝己氏がアメリカのケンタッキーで開催された競りで 160万ドル(約1億2800万円)で購買して、繁殖牝馬として日本に導入したようです。
その後は 5年連続でディープインパクトが付けられていますが(2015年産は空胎)、いまのところ結果は出ていません。本馬の全兄は 500万下を 2度勝ち現在 1000万クラス、全姉は先日の新馬戦で 3着でした。
しかし馬体を見るかぎり、全兄キラーコンテンツは母の色が濃く出ていたようで、筋肉質の短距離馬というイメージ。
全姉セリユーズは兄よりはディープ寄りに見えましたが、馬格があり、やはり本馬とは少しタイプが違います。
ちなみにセリユーズは新馬戦で上がり3F のタイムが 3位で着順も 3着でしたが、出遅れから大外を回ってのロスがありながらも直線で伸びていましたので、今後に期待できるでしょう。
ミュージカルロマンスの17(フォアシュピール)も、兄姉と同様の出来であれば勝ち上がりに困ることはなさそうです。
ディープインパクトとナスルーラ系の組み合わせ
勝ち上がりに困ることはなさそう、とは言っても、本馬の募集総額を考えると論点はそこではありません。大事なのはオープン馬になり、重賞で勝ち負けできるかというところだと思います。
その点に注意して、配合を見ていきましょう。
まずディープインパクト×ナスルーラ系についてですが、ディープ産駒のなかではあまり良い組み合わせとは言えません。
勝ち上がり率は 56.6%(77/136)と、JRA 登録馬全体の 30% 程度とくらべると非常に良い数字ですが、ディープ産駒全体では 58% なのでやや低い数字です。
1頭あたり獲得賞金を見ても、ナスルーラ系 3241万円、全体 3639万円ということで、ディープ産駒全体を下回っています。
これには繁殖牝馬の質も関係しているかもしれません。ディープが小さくパワーが足りないため、相手にアメリカのノーザンダンサー系が中心に用意された節があり、良質なナスルーラ系の繁殖牝馬が少なかった可能性があります。
しかし仮にそうだとしても、産駒全体を下回る数字が出ていることには良い印象が持てません。
レース機会 100以上という条件で見た場合、母父トニービンが 60%・4486万円、コジーン(Cozzene)75%・2891万円、サクラバクシンオー 41.7%・2398万円です。
母父トニービンの場合は勝ち上がり率も獲得賞金も高いですが、残念ながらトニービンとコンコルズテューンの血統構成は別物であり、同じような傾向が出るとは思えません。
また母父トニービン・コジーン・サクラバクシンオーのいずれでも、平地の G1馬は出ていません。
ディープと相性の良い母父フレンチデピュティ(36頭)では、ショウナンパンドラ・マカヒキ、ストームキャット(Storm Cat・50頭)ではリアルスティールなど 6頭の G1馬が出ています。
母父ナスルーラ系のディープ産駒で G1 を勝っているのはおそらくディープブリランテのみであり、相性の差を感じます。
ミュージカルロマンスの2017 の配合について良い点があるとすれば、母がスプリンターだったことで、パワーとスピードを補完できるであろうことですが、本馬にはその特徴は出ていないと思います(後述)。
本馬について、配合面では強調できる材料がありません。
※ この項で述べているデータは、2018年8月26日〜9月2日に調査した芝・ダートについてのものを基にしています。
躍動感を感じる素晴らしい歩様
兄姉がいまのところ成功しておらず、配合面で良い材料がないと断じている本馬ですが、歩様はとても素晴らしいです。それだけで全てが覆るほどです。
トモも前駆も柔軟性に富んでおり、後躯で生み出した推進力を可動域の広い肩でしっかり受けとめています。
特筆すべきはトモの柔軟性とバネで、蹄の返しも良く、常歩なのにまるで走っているかのような躍動感があります。それが良いのかどうか、一口馬主 2年目の僕には判断できませんが、えも言われぬ凄味を感じました。
「歩様はとても素晴らしい」「それが良いのかどうか判断できない」と前後の整合性がなく、意味不明の説明をしていますが、それほどインパクトのある歩様だと思います。
馬体や測尺はすこし物足りず、いかにもディープ産駒という感じですが、全兄キラーコンテンツとは全く似ていないその部分にこそ、勝機があると読んでいます。
兄は筋骨隆々でおそらく母似、姉は募集時はスラッとしていたもののデビュー時 496キロまで成長。
というわけで、馬体写真を見ても歩様動画の柔軟性を見ても、ミュージカルロマンスの17 こそが最も父に似た産駒のはずです。
ディープにパワーは必要ないので、よって配合面で計画されたパワーやスピードが上手く伝わってなくても問題ないのです。
姉は募集時の馬体重が 410キロだったものの、胸囲がすでに 177センチありました。胸囲と馬体重は測尺のなかでいちばん相関が高く、一方が大きければもう一方がそれに合うように成長しやすいです。
本馬の現在の胸囲は 167センチ。5月の遅生まれであることを考慮しても、大きいほうではありません。
見学ツアーで牧場スタッフさんに聞いたところでは「450〜460キロくらいで競馬に使えると思う」とのことだったので、総合して考えると重くなり過ぎることはないでしょう。
性格に関しては、「反抗的なところもあるが物覚えは良く、納得すれば大丈夫。他馬とはよくやり合っており、大きい馬にもひるまず挑む」らしいので、競走に向いているように思います。
聞くかぎりでは、仮に馬体重が軽いまま競馬に向かったとしても、レースで体の大きい他馬に気持ちの面で負けることはなさそうです。
後ろから見たときの飛節の動きや、見学ツアーに行った他の方があげている写真を見ると後肢が外向ぎみである点など、細かい部分で気になるところはあります。
しかしそれらや馬体の物足りなさ、強調できない配合面を差し引いても、余りあるほどの良さが歩様には感じられました。
ディープインパクト産駒についてはヒルダズパッションやシンハリーズが人気しており、ミュージカルロマンスの17 は見向きもされていないようです。
しかし個人的には、今年のキャロット募集のディープ産駒のなかでは本馬が最も良いと考えています。高額なので手が出しにくいですが、出資候補として検討しています。
この記事の作成日は 2018年09月04日 です。