一口馬主って何?
競馬ファンなら一度は「自分があの馬の馬主だったらなあ…」と思ったことがあるのではないでしょうか。それを叶えてくれるのが「一口馬主」(ひとくちばぬし、ひとくちうまぬし)というシステムです。
以前から一口馬主というのは、競馬ファンのあいだでは POG(ペーパーオーナーゲーム)などと同じように、ある程度知られているものだったと思います。
しかしここ十数年で、馬質が変わったのかはわかりませんが、オルフェーヴルやジェンティルドンナなどの超大物がでたり、宣伝すさまじい DMMバヌーシーが登場したりして、以前よりさらに認知度がアップした様子です。
直近の話をすると、2017年にはキャロットクラブのレイデオロがダービー馬となり、また 2018年にはシルク・ホースクラブのアーモンドアイが牝馬三冠を達成して、その勢いはとどまるところを知らないという状態。
彼らを見て一口馬主に興味をもった方もいるのではないでしょうか。
ここでは、そんな一口馬主の仕組みをサラッと説明します。
一口馬主の仕組み
一口馬主とは、1頭の競走馬を複数の人間で共同所有するしくみや、その所有する人をさします。「クラブ馬主」「一口クラブ」などが同義的につかわれます。
クラブと呼ばれる法人がいくつかあり、それぞれ毎年、数十頭の競走馬を募集にかけます。そのクラブに入会した人は、小口に分割された競走馬の持ち分を買うことで、その口数に応じた権利を得ることができます。
株式投資や投資信託をやっている人にはわかりやすいかもしれません(実際、一口馬主も金融商品取引法の規制を受けます)。ひとつの会社を多数の投資家でわけて持つように、1頭の馬をみんなで分け合って持つのです。
クラブによってちがいますが、1頭の馬はだいたい 40〜2000口程度に分割して募集されます。
それに出資応募して 1口以上をもつことで、馬主と同じように、馬が走ったときに賞金をもらったり、レースに勝ったときに口取り式(優勝時記念撮影)に参加したりできるというわけです。
本物の馬主になろうとしたら、馬の購入にも維持にも大量の資金が必要ですが、みんなで分割すれば小額からでも楽しめるよね、というのが一口馬主のステキなところです。
「出資と分配の仕組みについて | シルク・ホースクラブ」より転載
実際に出資するにあたっては、1つのクラブにつき、2つの会社と関係を持つことになります。上記は 2018年に牝馬三冠を達成したアーモンドアイの所属する、シルク・ホースクラブのケースです。
僕たちが実際にやり取りをするのは「愛馬会法人」のほうで、「クラブ法人」のほうは普段はあまり気になりません。
ただ出資馬のレース出走時に、新聞などに記載されるのはクラブ法人の名称なので、そこは覚えておくと「あれ、微妙に違くない!?」というように焦らなくてすみます(笑)。
ちなみに、シルクは 400口のクラブで、1口あたりの配当やリスクが小さいほう(多口)です。
本物の馬主との違い
一口馬主は、名称には「馬主」と入っているものの、実際には馬主ではなく、本物の馬主とは別物です。
そのため、競馬場の馬主席に入場したり、厩舎や美浦・栗東などのトレーニングセンターを訪問したり、出走レースや騎手を選択したり、引退を決定したりすることができません。
※ クラブの特典で、馬主席への招待などがあることもあります。ただそれは特典であり、通常のサービスではありません。
中央競馬で馬主になるには「年間所得額が 1700万円以上」「資産額が 7500万円以上」という厳しい審査基準をクリアしなければならず、未成年以外は基本的には入会できる一口クラブとは、違いがあって当たり前かもしれません。
とはいえ、一口馬主としてできることは少なくありません。むしろ、本物の馬主とそん色ないくらいの行為はできると思って差し支えないです。
出資した愛馬に会いに育成牧場や外厩を訪問したり、愛馬に命名したり、さらには口取りに参加したりできます。
愛馬の近況も公式サイトでひんぱんに更新されるので、それを見て成長を感じたり、レースへ向けた調整を知ったりできます。
気になることや意見があれば公式サイトを通じて問い合わせることもできるので、本物の馬主と違うとはいえ、やれることの範囲はかなり広いと言ってよいと思います。
一口馬主の良いところ
一口馬主の良いところはなんでしょうか。それは、出資した競走馬をより身近に感じて、親身になって応援できるところだと思います。
よく「POG と何が違うの?」という質問が出ますが、小さい頃から多くの情報に触れて、ときには会ってその成長を感じてきた思い入れのある愛馬が、出走したりレースに勝ったりしたときの喜びは、レベルが違うでしょう。
※ POG(ペーパーオーナーゲーム)とは、馬主になった気分で競走馬を数頭選択して、複数人でそれぞれの競走馬の成績をきそうものです。
POG では選んでしまえばあとは勝たなければ関心がわかないことが多いでしょうが、一口馬主では、勝ったら当然嬉しいですし、できれば上の条件へ進んでほしいのもたしかですが、負けても楽しめる部分があります。
通常の競馬ファンや POG参加者は関心が強くないと思われる、未勝利戦などにも注目して楽しめますし、もし着外に負けてしまったとしても、前走とくらべてのレースぶりの違いや成長を感じとることもできます。
なにより、お金がかかっているので応援への熱の入り方が違います(笑)。
身銭を切っている者としてのプライドもあわせ持つことになりますので、愛馬の出走をただ楽しみ、無事に回ってきてくれることに安堵する一方で、より高い着順を得て賞金を稼いでほしい、という願いも強くでてきます。
というわけで、POG や馬券などとは違う楽しみを覚えられる一口馬主、とてもオススメです。
この記事の作成日は 2018年10月17日 です。